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2011年11月

モンラッシェのような歌声

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石田一美さんは、ご自分の歌を、ワインに例えると、「モンラッシェ」です、と答えました。その心は、石を口に含んだような硬質な味わいがあるからだそうです。(ちなみに、モンラッシェは、フランスブルゴーニュ地方産辛口ワインです。土地が、石灰分の多い土壌なので、石田さんのコメントのような味わいになるそうです。)

レッスンの度に、それぞれの歌に対する感じ方を色々な切り口で聞いているのですが、石田さんは、どういう切り口で聞いても、即答が返ってきます。ひとつの歌に対して色々な角度から真摯に突き詰めている。そういう姿勢が、歌の深みを作るのですね。

石田さんは、プロのジャズシンガーです。

よく生徒の皆さんと、エニアグラムパーティーというものをすると、大変盛り上がるのですが、(エニアグラムは、人の性格を9つに分けて、それぞれのタイプの共通性などを合理的に分析する心理学です。)彼女は、タイプ3です。

タイプ3は、3つある感情センサーグループのひとつです。他2つの感情センサーグループとの違いは、目的と、手段の関係がはっきりしている所です。目的のために、自分と感情を分離させることが、出来る、と言われています。

石田さんのレパートリーで、「Give Me The Simple Life」などは、その感じが強く出る曲でした。歌いながら、ライブハウスの入り口で、コートを持って待っているお客さんがいると、「あ。あのお客さんずっと待たされてる。早く従業員が気が付いてあげないかなあ。」とか、色々な所に気を配りながら歌っている。そうすると、タイプ3の感情を切り離す感じが強くなっていました。

一方で、「Will You Still Love M e Tomorrow」などは、自分の内面だけに、フォーカスされた歌い方になります。

エニアグラムの何が面白いかと言うと、自分のタイプの陥りやすい所と、それを埋めるための統合の方向が具体的に書いてあるところです。血液型とかだと、O型のあなたは、こんな人〜それ当たってる〜」で終わりです。でもエニアグラムでは、その先が書いてある。あなたは、こんな人で、こういう傾向があるから、こういう視点で考えるようにしよう。」という具合です。

で、タイプ3は、自分の目的のために、感情を切り離すので、自分がどう感じているのか分からなくなったりします。でも、自分を演出する事は上手いので、きらびやかな印象は人に与えられる。

以前の石田さんの歌は、そういう感じもありました。でも、最近になって、ご自分で感ずるところがあったようで、きらびやかで外向的な歌い方を、すっぱりやめてしまった。
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そうしたら、歌の様相が劇的に変わっていました。きらびやかにアメリカナイズされた書き割りを取り除いたら、”砂の器”が出現した、という感じでした。何かこう、諸行無常的な歌声なのです。ジャズを聞いて、諸行無常と言うのが、結びつきづらいかも知れませんが、聞いて頂ければ、お分かり頂けると思います。只今、CD制作に向けて準備中です。

レッスン当初は、ソウルのレパートリーのために声量も付けたいという目的でいらしたのですが、人に向けて歌う、というよりも、むしろ、どんどん自分の中の何かに向かって、歌うようになりました。
本人は、それを「究極のひとりごと」と言って笑っています。

ところで、以前いらしていたボサノヴァシンガーのChieさんも,レッスン当初は、ジャズを歌われていて、バンドに負けないように声量を付ける目的でいらしていましたが、自分の特性を客観的に見つめた結果、ジャズより、ボサノヴァを歌うという方向にシフトチェンジしたわけです。

Chieさんも、石田さんもジャズという、形式に自分を合わせようという努力を続けて来ましたが、お二人とも、それを辞めて、自分の特性を活かす道を選びました。
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教える仕事をしていて、一番嬉しいのは、生徒さんのブレイクスルーに立ち会えた時です。
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ボイストレーナーが声量付けなくても良いよ、というのもおかしな話しに聞こえるかも知れませんが、私は、フォームに合わせてレッスンするよりも、その人の歌が活きる最良のやり方でレッスンしたいのです。ん?いやもちろん声量を付けるためのレッスンももちろんしますよ。そういう諸々のテクニックが出来た上で、使わない選択もする、ということです。

ということで、ワインに例えると、モンラッシェのような歌、そして、砂の器のような諸行無常感。
早く、CDを作り、聞いてもらいたいものです。

ところで、私の歌も、ワインに例えてもらいたいなあ・・・。


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